ダイバーシティに関する基本的な通念を考える

Google社員の多様性イデオロギー批判 - Think outside the box Google社員の多様性イデオロギー批判 - Think outside the box

にて、スターをいただきました。ありがとうございます。

Google社員の多様性イデオロギー批判 - Think outside the box

SATスコアに有意な差があるとして、男525点女495点(2016年)くらいの差なら、ほぼ半々ってことで良くないですかね。元々の話、女性進出は歴史的に意図して広げているので、先天的な優位性を説くのは無意味ですよね。

2017/08/08 12:05

b.hatena.ne.jp

他の方のコメントや、別の記事( 「女性は生まれつきエンジニアに向かない」と元Google社員は主張していたのか?:Geekなぺーじ 「女性は生まれつきエンジニアに向かない」と元Google社員は主張していたのか?:Geekなぺーじ )などを見て「そもそもダイバーシティについて認識にズレがあるのでは?」と思ったので書きたいと思います。

※もちろん、自分の認識が正しいとは思っていませんので、間違っていればご指摘ください。

 

結論

ダイバーシティに異論を挟む余地はありません。

積極的に多様性を確保するため、現状は多数派が「不公平だ」と思うレベルでの優遇策を少数派に施す必要があります。

それを「不公平だ」と語ることは、いかにその理論に科学的根拠があったとしても、受け入れられることはありません。

 

今回の騒動の経緯

私の認識する限り、今回の騒動は以下のようになっています。

  • Googleの社員が多様性に関する持論を展開した
  • ニュースサイトで取り上げられる
  • 議論が勃発
  • 社員が解雇
  • 議論は継続中

社員が解雇された理由に関しては、

グーグル、性的多様性を批判した社員を解雇-行動規範に違反とCEO - Bloomberg

ダモア氏の社内文書の一部は「ジェンダーに関する有害な固定観念を職場で助長させるという点で当社の行動規範に違反し、一線を越える」と指摘。 

と、行動規範に違反していると判断されたので、理論の是非に関しては言及してません。

が、ブログ等では「発言内容自体は間違っていないのではないか?」という話が話題になります。

Google社員の多様性イデオロギー批判 - Think outside the box

子育ては他の類人猿や霊長類でも雌の役割なので、男女構成比の違いは生まれつきの性差の反映と考えるのが自然です。ならば、テクノロジー業界の男女構成比が生まれつきの性差によるものであっても何の不思議もありません。

 

「女性は生まれつきエンジニアに向かない」と元Google社員は主張していたのか?:Geekなぺーじ

男性や女性という生物学的な男女に限定せず、男性的(masculine)と女性的(feminine)という傾向で表現した方が良い部分もありそうです。 論拠となる研究等への参照を十分に用意したうえで、断言するような表現を減らす方が良いとも思いました。 差別的と解釈されかねない表現を極力避けていれば、良い提案になった可能性もありそうです。

私個人としては発言内容自体が間違っている、と考えているほうですが、それはさておき、Google社はいわば「自社で推し進めている方針とは異なる方針を推し進めようとした」ことで解雇しているので、「そりゃそうでしょう」と思いますし、そこに異論があっても諦めて欲しいところです。

 

多様性を妨げる理論の何がマズいか

まずダイバーシティとは何か、というところおさえる必要があります。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ダイバーシティ・マネジメント

特徴

  • 多様性が企業の売り上げや発展に貢献し、競争力の源泉となるという考えに基づいている。具体的には多様性に基づくマネジメントで優位性があるとされる分野に、コスト、資源の獲得、マーケティング、創造性、問題解決、システムの柔軟性などが含まれている。また、最近では事業の成長そのものを促す機会として認識されるようになっている。
  • 個人、人間関係、そして組織といった3つのレベルを対象としている。つまり、女性や少数派のみに適応を押し付けるのではなく、組織文化やすべての人々がこのプロセスにかかわることが求められている。特に会社のトップや人事担当者は、訓練や指導を通じて積極的に支援することが必要となってきている。
  • 人種や性別に焦点が当てられがちだがダイバーシティ人種国籍宗教障害性別性的指向年齢などのほか、個人や集団の間で違いを生み出す可能性のあるあらゆる要素を考慮している。
  • ダイバーシティ・マネジメントは、プログラムではなく、プロセスである。あらかじめ決められた手続きや数値目標ではなく、実際の取り組みのプロセスで問題点や解決策が見つけ出されるといった、長期的な観点が重視されている。

 

第1の特徴に注目するとわかるとおり、「多様性を推し進めることが企業の発展になる」のですね。

Google社のような地球規模の企業であればなおのこと、多様性を求める必要があります。

 

で、多様性を推し進めるためにどうすべきかというと、「たとえ多数派に不利益であっても少数派に機会を与える」事なんですよね。

「卵が先か鶏が先か」という話かと思いますが、無理にでも少数派を引き上げれば、結果として少数派の地位が上がるだろう、という発想です。

例えば、政治の場で言うところのクォータ制もそうです。男女比を明確に割り当てる制度を実施することで、実際に政治に関わる男女比に改善が見られた例もあります。

www.nishinippon.co.jp

これだって、もしも「政治の場に女性が少ないのは遺伝的な理由がある」と言ってなにもしなければおそらく変わっていなかったものを、無理矢理制度にすることで一定の成果が上がったということです。

 

そういうことから、「多様性を求める」という目的のためには多数派への不利益があったとしても少数派をサポートしていかなければなりません。

なので、少数派に不利な論拠がいくらあっても、それはまったく意味がないのです。

 

もちろん、少数派がなぜ少数派なのか、ということに関しては研究する価値はあります。

しかし、それと「会社で推し進める」ことには大きな隔たりがあります。

 

また、少数派がなぜ少数派なのかを研究するにあたっての問題もあります。

少数派と多数派との間にはサンプル数の差があるため一概に同列で比較できませんよね。

少なくとも、歴史的背景から女性の社会進出は男性に比べるとはるかに遅く、女性参政権ですら世界的にもまだ100年程度です。

なので、職種別の男女比を提示したところで、それが「男女の性質の差」のせいなのか「女性の社会進出の遅さ」のせいなのかはわかりません。

 

実際のGoogle社員の意見への反論は

thenextweb.com

 にソコソコ納得する内容がありました。

 

そういう議論は別にやるとしても、社会が全ての個人に開かれたものになってくれたらいいなと思います。

多様性を確保するためにいろいろ頑張っているところでは、それを妨げる発言は諦めて欲しいところです。